vol.18  いのちのお話会 

​「あきらめる、そして頑張る

​〜がんを生きる緩和ケア医〜」

​ 大橋 洋平 (海南病院医師・緩和ケア医)

 あきらめるとは、断念することである。念、すなわち「おもい」を断つことであり、通常ネガティブな言葉とされる。しかしここで私はあえて唱えたい。まずあきらめることを。現役がん患者の私は緩和ケア医でもある。昨年胃に悪性腫瘍なる消化管間質腫瘍(ジスト)を発病し、手術施行。悪性度が非常に高いため抗がん剤治療が、手術後すぐに始まった。苦しい時間だった。胃が無いことで消化液が食道、時には喉まで逆流してくる。フラットには休めない。抗がん剤の副作用で吐き気も出るし、白血球も下がる。しんどい10ヵ月が過ぎた時に、肝臓転移が発覚。ここで私は腹をくくった。今までの自分に戻ることは無理だと。つまり今までの自分をあきらめた。たとえば大食漢を。でも生きることをあきらめたのではない。生きていたいし、生きていきたい。そこで今の自分を頑張ることにした。個包装のスナック菓子をたしなむなど。そして何と言っても、現在の生きがいは「出会い」だ。新たなことも再びのこともある。

いずれも嬉しい。まずあきらめるとは、私には非常にポジティブなものである。こんな緩和ケア医の身上と心情をお示しできる機会を頂戴できますこと、皆さまに心より感謝申し上げます。

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プロフィール

1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒業後、総合病院の内科医を経て、2003年、大阪市の淀川キリスト病院で1年間、ホスピス研修。翌04年より愛知県のJA厚生連海南病院・緩和ケア病棟に勤務。08年よりNPO法人「対人援助・スピリチュアルケア研究会」の村田久之先生に師事し、13年度から18年度まで同会・講師。医師生活30周年の18年6月、希少がん「消化管間質腫瘍」(ジスト)が発見されて手術。抗がん剤治療を続けながら仕事復帰し、自身の経験を発信している。